それでも石破首相に期待ー2024年衆院選の意味を考える

 2024年11月5日、アメリカ大統領選が行われ、日本の多くの人の期待あるいは予想に反して、トランプ氏が大統領に返り咲くようです。世界はますます混迷の様相を呈しているようです。二十一世紀は世界史の大きな曲がり角であると多くの人も感じているのではないでしょうか?
 混乱にあっては単に状況に反応するだけではなく、長期にわたる歴史的展望を確たる物として持って、未来を開く姿勢が求められるのではないかと思います。それが伝統ある国の果たす役目でしょう。
 2024年10月27日、衆院選が行われ、自由民主党が大敗しました。これに関して様々な論評が加えられています。ここではこれについて考えたいと思います。多くの人の見方とは違いますが、一つの見方としてお読みくだされば幸いです。何故なら東京一極集中というのは、日本特有の現象であり、未来を創成して行くには全く役に立たないどころか有害であると考えられるにもかかわらず、日本人の大半が東京一極集中の現実の上に未来を考えているために、未来が見えなくなっていると考えられるからです。

東京一極集中打破

 多くの批判も読んだ上で、あえて私は石破首相に期待したいと思います。何故なら彼の一番重視する政策を、東京一極集中打破であると考えるからです。それは将来の日本にとって最重要なことであると、過去十年以上、機会があるたびに私は表明してきました。始めは東京で働いていながら、そして過去六年間は京都で様々な人と交流する活動を行いながら。
 東京一極集中打破。これが日本の未来を開く鍵であり、伝統文化で日本が世界の未来に貢献する道でもあります。
 東京一極集中打破を政策として出来るのは明らかに日本政府だけですが、これを民主党政権も含めて、歴代政権はまともに取り上げてきませんでした。石破首相はそれを政策の第一にあげています。批判にめげずこの方向に力強く踏み出せば、彼を支持する人は増えていくと確信します。なぜならば、東京一極集中の弊害に悩んでいる人は、東京経済圏の外にある地方の人たちであり、その人々の数は過半数どころか、日本人口の70%ほどあるのですから。そして東京一極集中は長い目で見ると崩壊せざるを得ない、持続不可能な国の形態なのですから。
 東京で働く若い人々にも、通勤の酷さ、給料の少なさ、未来への展望のなさなどで、日々苦労している人も多いでしょう。その苦労の原因の少なからぬ部分が、東京一極集中にあると気づかれたら、東京一極集中を打破して地方分散型に国を変えていき、そこに日本の将来を見る考え方に賛同する人たちも多いに違いありません。
 東京一極集中打破がそんなに大切なことなの? 多くの人がそう思うに違いありません。しかし次のことを皆さんご存じでしょうか? 大都市にすべてが一極集中しているのは先進国のあいだには見当たらないことを。ギュウギュウ詰めの通勤列車で、長い時間をかけて出勤するなど、先進国には皆無であるのです。また逆に地方衰退が日本ほど激しい国は、先進国の中で皆無であることをご存じですか? それは先進国がすべて、大都市集中型の国家ではないことが原因なのです。言い換えれば、国のすべての地方で、安定した経済生活が営まれているのです。
 例えばドイツ最大の都市ベルリンでも、一極集中が生む悪い現象は全く見られず、街の中心部でも人々はゆったりと生活しています。それはドイツが地方分散型の国家であるからです。
 またアメリカ大統領選挙にあたっては、合衆国が対等な州の連邦であること、すなわちアメリカはその成り立ちから分散型の国であることがわかります。世界の主要国を見ると、首都一極集中型がむしろ異常なのです。

東京一極集中打破の扉を開いた

 私はこの大敗で、石破さんは政治家として名を残すと思っています。それは大敗したからではなく、日本再生の為の大きな扉を開いたからです。東京一極集中打破を彼は政策として常に掲げてきました。そして今回の危機的な選挙の最中でも、全国の人に解ってもらいたいとばかりに、東京からは無視されると恐らく知っていながら、第一の政策として東京一極集中打破、日本創成とはっきりと言ったのです。案の定と言うべきかそれは東京の人には、特に東京の論壇には無視されました。しかし日本の現状に対して幕末に比すべき危機感を持ち、未来を真剣に考える全国に散らばる人達には、強く心に残ったと思います。
 首相になってからの彼は大ブレに見えますが、長年の政治家としての主張は今でも少しもぶれていないように思います。それは形だけの「地方」選出議員となった、多くの東京色に染められた東京在住議員とは違って、鳥取県という東京中心社会から見放された地方からの選出で、正直に地方選出議員の自分を考え抜いた、彼特有の姿勢ではないかと思います。
 大ブレも仕方ありません。自民党の中では東京一極集中打破という主張は極めて少数派です。自民党は東京に基盤を置いているわけではなく、日本全国に散らばっている地方の人々が基盤であるに関わらずです。だからこそ東京派となった自民党の政治屋達から毛嫌いされるのかも知れません。また他党の国会議員は皆、東京一極集中を当然のことと考え、その打破が政治的に大きな問題であるとは考えることさえできぬ人たちですから、彼の居場所ではないわけです。いわゆる革新派は東京を中心とする都会に多いですからね。
 東京首都圏という一地方の住民のイシューすべてが、あたかも全国民が関与する共通のイシューだと勘違いするのも、表に出る論壇が東京に集中しているという「東京一極集中」が原因であることは、東京を離れて見るとほとんど自明のことなのですが、「東京村」の人たちはそれに気がつかないでいます。
 例えば今回の衆院選で、一部の東京メディアが報じた「重要な」イシューの一つである同性婚など、多くの地方で何その問題って感じる人が大多数じゃないかって思います。一方では逆に、地方衰退の問題は多くの地方で深刻な問題であると、間違いなく感じられ受け止められるでしょう。地方では地域の住民全体の存続に関わる地方衰退が、我が身に関わる大問題です。一方地方衰退は多くの東京の人たちには、自分たちの問題でないと無視されるでしょう。このように東京と地方では重視する問題は違うでしょうね。
 今回も野党が一致して自公政権を打ち倒すべきだという意見も多いようですが、どういう政治をするのか全く見えないと反論されています。どう考えたって東京一極集中打破は野党連合では考えないでしょう。失われた30年がさらに40年になるだけです。

東京一極集中の弊害

 東京一極集中打破は、将来の日本を見据えたとき、現在における最も大切な政治・経済・文化を通して重要なクリティカル・イシューであることをみたいと思います。政治家・官僚・全国諸組織代表だけではなくマスコミ、論壇、多くが東京一極集中の上にあぐらをかいている現状で、国民一般がそれを認識するのは難しい状況です。地方に住む人々はもとより、肥大化した東京であえぐ、まさにこれから自分の人生を始めようとする若い人々にそれを理解してもらうのが、未来の日本を切り開くことになるのですが。
 まず東京一極集中が如何に言論をゆがめているか、逆説的に証明してみましょう。
 東京一極集中は以下に述べるように、問題ないと言い切る正当性を持っていないことが様々にあるのですが、東京に立脚している論壇から東京一極集中の是非について指摘がないのは、東京論壇が問題提起の能力を欠いているためであると思います。この問題が提起できないのは、自らの存在基盤が揺らぐから、本能的に避けているのかもしれません。
 (以下は高校数学で習う背理法です。もし東京一極集中が日本にとって正しい選択であるとすれば・・と言う点で現状と乖離する・そう思って読んでください)
 首都東京圏の人口は日本の人口の1/3弱。つまり2/3強の人たちは、首都圏以外の住民です。東京圏以外が多数を占めるなら、一極集中をまともに問題視する疑問が広まり、国民の大多数がその問題について考えるはずでしょう。明らかに日本の一地方たる東京の首都圏が、全国民のイシューすべてを取り仕切っているはずはないのですから。もし民主主義が正当に機能しているならば、それが当然だろうはずじゃないですか。多数の人が自己を素直に表現するとすれば、間違いなく過半数を持っている東京以外の「地方」を、もっと全面に出せる基盤を造りたいという論が出てくるでしょう。
 地方が東京より豊かなら、少なくとも同等程度に豊かなら、東京一極集中は問題にならないかも知れませんが、事実は全くその逆です。経済成長をそれなりに確保している先進国がすべて一極集中型の国家構造を持ち、その為にかろうじて先進国の立場が保たれているとのエビデンスがあるなら、問題にはなってもその利益があるのだから仕方ないと考えられるかも知れませんが、事実はその逆です。日本の千年以上の歴史が一極集中の歴史であり、一極集中が日本文化の特質なら、一極集中も仕方ないと人々が思うかも知れませんが、はっきりと文書等で残る日本の千年以上の歴史は全く逆のことを教えています。
 歴史的にも、他の先進国を考えても、経済を考えても、一極集中が優れているという根拠はまるでないのです。それなのに何故、現代の論壇はあるいは政治家は、一極集中問題を無視するのですか? 何故庶民は一極集中が当たり前と思っているのでしょうか? 地方に行けば一極集中に歯ぎしりすることが数多くあるのに。長いものには巻かれるしかないという諦めで、東京一極集中を恨んですらいるのに。
 日本の「経済」は庶民の目にも明らかに失速しています。特に地方が疲弊しています。失速した日本経済は失われた30年と呼ばれるに至りました。でも何故失われた30年が始まったのか? 国民の多くが納得する説明はされてないでしょう。あえてここでその理由を考えてみましょう。

失われた30年

 日本経済が失速した失なわれた30年はいつ始まったのか? それはバブル崩壊後と言われています。 バブル崩壊とほぼ時を同じくして東京に高層ビル群が建ち始め、東京一極集中が加速しました。そして失われた30年という長い経済停滞が島国日本で始まりました。最初は「失われた」時代の始まりと意識する人々はほとんど居なかったでしょう。ただ企業が新人を採用しない就職氷河期として、失われた時代が始まったのです。将来を保証されたはずの若者に、最初にしわ寄せが来たのです。
 バブル崩壊のころ日本は間違いなく先進国でした。ですが当時先進国の中で大都市一極集中の国は日本しかありませんでした。そしてそれは現在に至っても皆無なのです。
 日本はもはや先進国であると言えないまでに経済停滞が続いていますから、先進国の中で一極集中型の都市分布を持った国は現在皆無であると言えます。
 バブル崩壊はそれまでの日本のあり方を考え直す絶好の機会でした。事実脱自民党政治の新しい動きが様々に起こりました。これは日本が民主主義国家であることの重要な証だと思います。しかし残念ながら東京一極集中が問題であるとの認識はありませんでした。そのような機はまだ熟していませんでした。逆に東京のあちこちに○○再開発という言葉で、勢いよく高層ビルが建っていきました。
 事実1990年代に、日本の電力消費が急増しています。これは新しく電気を爆食いする何かが急激に増えたことを意味します。まさに高層ビルがそれに当たります。電力消費急増は、同じ時期の他の先進国には見られない現象で、日本だけに見られる現象ですが、残念ながら日本で知る人は少ないでしょう。エネルギー消費データは国際機関が正確に公表しているのですが。電力消費の急増にもかかわらず経済が停滞したことは、その増加した電力消費が、経済から見て間違った場所に投入されていたことを明らかに意味します。電力を大幅増加させながらそれをドブに捨てたと言えますね。
 こうやって見ると、次の簡単な仮説が浮かんできます。東京集中は先進国に追いつくためには都合が良かったが、追いついた後「追いつくべきモデル」がなくなったとき、日本独自の経済成長を創り出す力を失ってしまったのではないだろうか、と。

ガラパゴス現象としての東京一極集中

 東京一極集中は、日本のお家芸であるガラパゴス現象であるように思います。でもあえて言います。ガラパゴス現象はしかたありません。島国なのですから。島国だから良いこともあるし、困ることもあるのです。
 皮肉なことにガラケーなどと馬鹿にして、ガラパゴスだから遅れているという言い方が、東京一極集中を支える固い柱でもありました。何故なら遅れている日本に、進んだ外国の最先端の情報を集めている基地というのが、東京の売りなのですから。
 東京に行かなければと思っている若者は京都にも多いことを、6年前東京から京都に移り住んで痛感しています。まず職がないし、たとえ職があっても東京の方が良いのだと、様々な理由から思ったり。現に京都に感謝すると言ってそれを売り物に京都で旗揚げしながら、情報が集まるからと言って東京に移った京都で勉強した若手起業家もいたりします。でも一世紀以上前の文明開化の時代じゃあるまいし、何故東京に出て行かなければならないのか。不思議なガラパゴス現象だと思います。
 一極集中が経済的に優れているという多くの日本人が受け入れている「常識」は、戦後の高度経済成長が生み出したガラパゴス常識であることは明らかです。何故なら日本と同様の敗戦国であり、戦後めざましい経済復興を成し遂げたドイツは、全く一極集中を取り入れませんでした。
 また東京に行けば多様な意見が聞かれるというのも明らかな幻想です。東京に蔓延る論壇は、以前は日本全国の情報を集めて、多様性を持っておりました。高度成長を契機に、日本全国から多様な人材が東京に集まっていたので当然です。しかし現在では、東京人のほぼすべてが二世・三世の時代になって、地方色を失ってしまっています。地方から選ばれる二世・三世議員の大部分が、地方を代表していないことは明らかでしょう。こうしてみれば現在の政治的混乱も、東京一極集中にその遠因を持つとも思われます。経済の中心と政治の中心を別にしておけば、政治の質を保つことが出来たのではないかと。
 ドイツは歴史を通して完全に地方分散型の国家です。地方分散型で戦後復興を成し遂げ、たとえそれが一時アメリカに迫った日本ほどには急激な復興と成長ではなかったにせよ、安定した成長を続けることが出来る体制を続けました。
 逆に言えば常に外国の新しい情報を取り入れて居るふりをしなければ、東京は成り立たなくなるのです。常に変る東京。常に再開発される東京。でも何のために変るの? 芸術のため? 新しい文化のため? そんな一時の芸術や文化とは無縁だった千年続いた日本伝統文化があるのにそれを持ってくるの? 
 いや経済成長のため? でも失われた30年を経験している日本は、常に変化する首都の恩恵は受けてないですよね。 東京の魅力を増すため? でもそのために限られたパイを分け合っている地方を犠牲にするなら、東京首都圏以外の日本人口の60%以上の人の賛同は当たり前のことながら得られませんよね。
 だから石破さん、自信を持って頑張ってください。
 常に変化する東京が地方の経済を圧迫し、ひいては日本の衰退を促進することに気がつかない東京やそれに追従する都会の人たちが残念ながら多いようです。例えば福岡などでも天神ビッグバンですか、天神に高層ビルを建てるとか、ほどほどにしないと九州停滞の原因を創り出さないかとちょっと気になりますがね。高層ビルを街の中心に少数造るのはあり得ると思いますが、ビル群をむやみやたらに造るなら、結果的に経済停滞を生み出すというエヴィデンスを、東京が示しているとも思えます。
 東京一極集中打破が必要である理由の最後に、でも最も重要なこととして、(英語の挨拶でよく使うラスト・バット・ノット・リーストlast but not leastです)集中した大都市は持続不可能であることをあげておきます。これは私の専門分野である核物理学を元に長期にわたる思考を元にした結論です。
 さきほど失われた30年の初期に急速に消費電力が増加したと書きました。この原因が高層ビルであるに違いないとも。日本はもともとエネルギー消費はドイツなどと比べて少なくて済んでいました。温暖な気候で、冬の暖房のエネルギー消費が少ないことが、その大きな原因です。しかし日本のエネルギー消費は1970年代から急増し始め、現在のエネルギー消費は例えばドイツを上回っています。化石燃料をガンガン使って社会を作り替えました。その結果日本は脱化石燃料が最も難しい国の一つになっています。再生可能エネルギーでは、まるで支えることが出来ないように、社会を変えてしまったのですね。再び社会を変えて、再生可能エネルギーで支えることができるようにしていかないと持続可能な国家ではなくなっているのです。
 東京一極集中をこのままにして、脱炭素を図るなら、日本経済はさらに酷い状態になるでしょう。東京一極集中をこのままにして、脱原発は非常に難しくなります。だからこそあの福島原発事故にもかかわらず、脱原発の声はあっという間に萎んでしまいました。

一極集中は何故起きたのか

 東京は今や世界最大の都市となっています。東京一極集中は東京だけを言っているのではありません。東京都市圏のことです。東京都市圏の人口は約3600万人。日本の人口のおよそ三分の一を占めます。
 そんな大都市圏は先進国にはありません。ニューヨーク都市圏でさえせいぜい一千万人くらいでしょう。合衆国人口の三十分の一程度です。念のためにアメリカの首都はワシントンですね。人口は約70万人。私もワシントンには合計二年ほど居ましたが、ワシントンの通勤圏である地域の人口は恐らく100万人程度でしょう。
 ドイツ最大の都市であり首都でもあるベルリンは人口360万人。これもドイツ人口の二十五分の一。そしてベルリンの外に都市と呼べるほどの街は100km離れなければ見つかりません。ベルリンには通勤圏として成り立つ近隣の街はないのです。
 このような構造だから、再生可能エエルギーで街を支えることが出来やすいのです。ドイツなどで今世紀の半ばには温暖化ガス排出をゼロにすると言っているのには、このような背景もあるのです。東京に在住しながら、温暖化ガス排出ゼロなど夢物語を語っている人がかなりおられますが、もう少し基本から考える習慣をつけて欲しいものです。そのうち新しい技術で脱炭素が達成できるという幻想は、あの日本には神風が吹くという神話と同じような、馬鹿げたアイデアだったと百年後には評価されるでしょう。何らかの新しい技術は開発されるでしょう。でもそれを寄せ集めても、肥大した都会を支えることは不可能でしょう。何故なら持続社会のエネルギー源ー再生可能エネルギーは、集中とは無縁なのです。
 またドイツには高層ビル群など皆無ですね。都市規模はそのおかげで肥大化しないで済んでいます。その結果日独のどちらが現在GDPが大きいのか、皆さん知っているでしょう。え、知らない? あなたの近くにいる経済学部卒業生にお聞きなさい。日本ほど経済学部卒業生が多い国はないのですから、あなたの近くにも居るでしょう。また言い換えれば日本ほど経済学部の大学教授が多い国はないのですから、できたら経済学部の先生に聞いてご覧なさい。今年日独のGDPの大小が逆転したのです。その逆転は数十年ぶりのことです。それは何故起こったのですかと。
 東京と同じ規模で存在する都市は、上海あるいは北京。中国を先進国に入れる人は、世界中見たっていないでしょう。上海は石原知事の頃、上海の政府あげて東京を見習って、東京に必然的に似た都市になったとか。中国以外で東京規模の都市圏があるとすればアラブ諸国、インド? 急速に外部から進んだ知識を学ぼうとすれば一極集中するのでしょう。しかし一旦外からの知識を必要としないまで外部に追いついた国は、集中が邪魔になることの「先進的な」例を、東京が示しているように思います。
 だとすれば非西欧世界でいち早く先進諸国の仲間入りを果たした日本は、後進国が進むべきモデルを示してこそ、21世紀から始まる持続可能社会創成の第一の推進国になり得るのではないでしょうか。明治政府が示した一都市に先進情報を集中するための優れた機構としての一極集中。また国全体に及ぶ災害ー日本の場合は戦災ーを克服して、経済発展を成し遂げるために採用した一極都市集中。しかしその目的を達せば、集中を止めて、日本古来の分散型にする。
 ウクライナを始めとして、国全体の災害を復興させるためのモデルは、永久平和が世界にもたらされるまでは残念ながら日本の経験はこれからも必要とされるかも知れません。その意味で東京は良い例になるでしょうが、復興の初期の目的を達成すれば、集中を解かないと停滞が始まることの例にもなっているのではないでしょうか。
 集中した復興・成長の中で、それを成し遂げた後安定した持続社会の繁栄を成し遂げるためには、短期的に生まれた既得権益保有者(例えば東京に集中する組織、「進歩的」な人)の妨害をはねのけての安定成長社会への変身が必要と言うことになります。集中して追いついた後は、長い歴史を教訓に歴史に基づいた姿を生かした形を模索する。それが後進国から先進国に仲間入りした国の、次の時代に向けての役割なのではないでしょうか。
 そしてそれができるのは今日本だけです。○○ができるのは××だけという言葉は、選挙期間中多くの党派が口にした言葉です。だからこそ日本では超党派での考えとして、採用できるのではないかと期待するのですが。

未来へ向けて

 最初に述べたテーマに戻ります。東京一極集中打破を成し遂げるための第一歩を、石破茂という政治家が踏み出したことで、石破現首相はすでに歴史に残る業績を上げたと言えないでしょうか。東京(圏)に住みながら、日本全国を代表していると傲慢にも考えている政治家やマスメディアの限界を、衆目の前にさらすことによって。
 石破さん頑張ってください。古い考え方に縛られているのは、あなたではなく、口をそろえてあなたを批判する東京のマスメディアです。多くの地方首長が、そして地方の人々があなたに期待しています。裏金問題よりも政治的に本質的で、最低賃金アップよりも将来を開くために重要なこと、それは他の先進国には見られない日本の長期にわたる経済停滞を打破し、日本伝統文化を元に日本の将来を開き、その延長上に持続可能な未来を開く可能性を東洋から世界にみせることです。
 それは地方を創成し、日本を再生させることから始まります。それは石破さんあなたの言うとおり、東京一極集中打破に他なりません。それが日本の歴史を生かしながら、将来の世界に貢献する大きなきっかけになるのです。
 2024年夏、ドイツを時間をかけて周遊し、改めて確認したことがあります。ドイツには肥大化した都市は無いことを確認するのが主目的でしたが、更にそれぞれの都市の交通網を見るのが次の目的でした。その結果確認したことは、多くの都市で路面電車が活用されていること、人口30万人以上の都市にはすべて、20万人以上でもほとんどが、路面電車を活用している様が印象に残ります。交通の整備は未来に残る事業です。高度成長以降の日本は、優れた鉄道交通網の意図的なカットを繰り返してきました。これは大きな間違いでした。
 鉄道は持続社会創成の面で非常に重要な事項です。EVが脱炭素と絡めて主張されますが、電車と電気自動車では、消費電力には格段の差があります。鉄道はエネルギー消費を格段に押さえるのです。
 日本でもドイツでも交通には多大なエネルギーが消費され、日本でのエネルギー消費のうち1/4ほどが交通で消費されています(日本では工業での1/3に次ぐ大きさ)。しかし交通での消費エネルギーの大部分(約90%)は道路上で使われ、鉄道上ではわずか2%にしかすぎません。地方創生は明らかに各地方でのそれぞれの工夫が必要ですが、地方の新幹線網整備と、路面電車(LRT)整備は共通の政策として、国レベルで取り組むことが可能でありそして必要な課題です。新幹線整備と都市での路面電車(LRT)普及は、21世紀の課題である持続社会へ向けた地方創生・日本再生の大きな旗印になるのです。

ドイツが地方分散型国家であることを動画でご覧ください。共通してLRTもご覧頂けます。
都市の中心部を見比べてみようードイツオーストリア編

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