発電

エネルギーバランスのサンキー図で、気になることがありました。発電についてです。今やエネルギーの代名詞になっている感がある電気ですが、電気は二次エネルギーであり、何か別のエネルギーから変換される、すなわち発電される必要がありました。そのためエネルギーバランスのサンキー図では、様々な一次エネルギーがpower stationに流れ込み、power stationからは、電気と「エネルギーロス」が出て行きました。エネルギーロスは、主として火力発電や原発からでした。火力発電も原発も、発生させるのは熱エネルギーです。熱エネルギーを他のエネルギーに変換する場合の限界は、カルノーによって考察されました(「エネルギーって何だろう?」20ページ)。その限界値を絶対温度の概念を使って書いておくと

  • 熱機関の限界効率 = (T2 – T1)/T2       ただし
  • T2: 高温部の絶対温度
  • T1: 低温部の絶対温度
  • 絶対温度(K) = 摂氏温度(℃) + 273

となります。例をあげておくと、

  • 0℃  = 273K
  • 100℃ =373K
  • 27℃ =300K
  • 例えば高温部:100℃、低温部27℃の限界効率=73/373

つまり誰かが100℃のお湯を沸かして、その蒸気の力で発電機を廻したいと思ったとします。そうすると高温部の温度は100℃です。低温部は気温と考えて良いでしょう。そうすると水蒸気から周りの空気に熱エネルギーが流れます。その一部を電気に変えることができますが、効率の限界は73/373、つまり19.6%ですが、通常その限界の半分ほどが実際の限界となりますから、お湯を沸かすために焚いた火の熱の10%くらいしか電気に変わらないことになります。地熱発電なども地熱熱源の温度は100℃程度とすれば、やはり効率は10%程度と思って良いでしょう。
 大型火力発電所は、そのため高温を作り出すことにこだわります。ガス発電は一番温度を上げやすく、1500Kほどにも、温度を上げています。そうするとコンバインド発電みたいな技術を適応でき、最新のガス発電は効率60%程度の技術を日本は持っています。また単純にCO2排出が多いと敬遠される石炭火力も、一旦ガス化を図れば、かなりの高効率になります。感情的なスローガン「CO2はダメ」に乗ることなく、冷静に「脱化石燃料」を、地域住民全員の議論の上で、順序よく実行していくことが大切だと思います。

power stationの「入力」・「出力」

  • IEAで検索⇒IEAのHPへ
  • サイトアドレスiea.orgの後 /sankey を入力
  • 左の国名でjapanを選ぶ

これだけの操作で日本のエネルギーバランスの2019版をオンラインで見ることが出来ました。オンラインで見ると更に便利なことがあります。IEAが持っている基礎的なデータを数値でこのサンキー図から読むことが出来るのです。要所要所に詳しいグラフやデータがリンクしているからです。
 例えばbalance表で見てみましょう。power stationは発電所を意味することを、上段でお話ししましたが、そのpower stationのマークにカーソルを当ててクリックしてみましょう。すると右の円グラフが下の数値とともに出てくるでしょう。視覚的に発電に使われているエネルギーは、石炭と天然ガスだとわかります。そしてそれに続くのがNuclearすなわち核(原発)だとわかります。
しかしこの値はあくまで入力としての(すなわち変換前の)エネルギーであることを思い出しましょう。pawer stationに投入されているエネルギーは円グラフの上にある183.7Mtoeです。
 そこでpower stationの右に出ている水色の線にカーソルを合わせクリックしてみると、右の二番目の画面が出てきます。そこにはElectricity from power plants とあって、その値が89.2Mtoeであることを教えてくれます。また水色の線の下に出ている黒い線の上で同じ事をすれば、Power plant lossesが92.4Mtoeであることがわかります。エネルギーロスが発生する電気よりわずかに大きいのです。このため、この図からは、電気の何%が石炭に依るのか、原発に依るのかはわかりません。入力におけるエネルギーの比は、出力における各一次エネルギーの貢献度の比ではないのです。
 そこで少し電気については知識が必要で、その知識で値を修正しなければなりません。その知識はそれほど深くなくてもかまいません。一般に発電するには最初に熱エネルギーを発生させ、発生した熱エネルギーを電気に変える方法とそれ以外のものがありますが、最初の種類の電気の値は、カルノー理論から、ロスが大きいことです。一方水力などでは、IWAのデータは発電量=水力としての一次エネルギーと同じと考えて構いません。日本では火力発電(石炭、天然ガス)は40%が電力になる、そして原発では1/3が電力となるとおおざっぱには考えておいていいでしょう。

power station への入力 ー 一次エネルギー
power station からの出力 電気 一次エネルギーの約半分
一次エネルギーからのエネルギーロス。電気とほぼ同じ量(少し多い)

 その考えでおおざっぱに見積もれば、今や新しい再生可能エネルギー(太陽、風)の発電量は、古い再生可能エネルギー(水)に比べられるほど多く6Mtoeを越え、原発はそれに比較できるほど多いが5Mtoeを少し越えるだけです。そして化石燃料が一番多く、石炭も天然ガスもどちらも30Mtoe弱の電気を供給しています。
 地熱(geothermal)とバイオマス(biofuels and waste)も電力に変えると、貢献度はずっと少なくなります。これらのエネルギーを利用する時、本当に電気に変えるのが有利なのか、それとも熱を直接利用する方法はないのだろうかと、考えて見る必要があります。