私は日本の多くの地方都市にLRT導入を進めていくことが必要であると考えています。何故LRTか?
そりゃかっこいいし、経済活動に役立つし、便利だし・・。LRT派の人々の主張も様々でしょう。しかし私には原点があります。自動車過剰社会は長続きしないことへの確信です。
年老いた私には夢があります。死ぬまでに持続可能社会へと歴史の流れを変えていく日本を見たい。明治時代近代化を取り入れ、先の大戦後にはアメリカ流の近代化を取り入れた日本のエネルギー消費の歴史を見ていくと、持続可能社会から、わざわざかけ離れた社会に、ひたすら向かっている気がいたします。
持続可能な社会にするというのは、今や世界共通の基礎的な考えになりつつあります。しかし実際にそのような社会に向かっているかを検証する人はあまりおりません。そして検証してみると、持続可能社会に向かいつつあるとは、とても思えないのです。特に現代日本では。
プーチンやトランプは明らかに持続可能社会へと舵を取る意識はありません。プーチンやトランプを堂々と非難するためにも、日本で持続可能社会へ向けた行動を起こそうではないですか。いやちょっと前置きが長くなりました。
交通手段のエネルギー消費は家庭全体より多い
エネルギーを大量に消費する場所での大幅な省エネが大切なことは言うまでもありません。しかしそのような場所は、今や少ないだろうことも多くの人が納得するでしょう。しかし自動車が支配する交通の分野は、その少ない場所なのです。
現代社会は化石燃料に頼り切った社会です。持続可能社会では化石燃料消費は自然エネルギー消費に置き換わっているはずです。様々な試みが行われていると、人々は信じています。21世紀に入っても、様々なエネルギーについての話題がありました。しかしほとんどの新しい試みの話題はしばらくすると消え去っていきました。そして思い出したようにガソリン価格上昇の話題が繰り返し問題になってきたし、今もガソリン価格への補助が大きな政治的課題となっています。これからもガソリン価格問題は繰り返し蒸し返されるでしょう。唯一の解決策は、ガソリンを使わなくてよいようにする事です。それはどうやったらできるでしょうか。
日本でのエネルギー消費を把握している人はほとんどいません。おかしな話です。これだけエネルギー問題が様々な問題に絡み合っているのに。エネルギー消費の実態を知るには、少し勉強すれば、理解できるのですがね。日本だけのエネルギー消費を知るには、資源エネルギー庁のデータを調べると解ります。下に2023年度の日本の年間エネルギー消費の部門別割合を示しておきます。

日本でエネルギー消費が一番多いのは工場においてです。これは欧米にも見られないことで、日本の工業生産能力は非常に高いと言うことになります。工場の省エネや再生可能エネルギー導入は、工場の中にいる技術者集団に任せておきましょう。
家庭での省エネがしばしば問題にされますが、家庭でのエネルギー消費は全体の13%です。しかしそれよりもずっと多いのが交通手段によるものだと解ります。22%ですから家庭の1.7倍ほども消費しているのですね。何故これを真剣に取り上げないのでしょう。
エネルギーと言っても様々なエネルギーがあります。どれもエネルギーですから、その量は中学や高校でもならうジュールを用いて比較できるのですが。家庭でも電気、都市ガス、あるいは灯油(石油製品)が使われますよね。交通手段では、どのエネルギーがどの割合で使われているのでしょうか?

交通手段(運輸部門)のエネルギーは、現在は基本的には二種類です。ガソリンなどの石油製品と電気です。そして何と98%が石油製品で占められているのです。電気はわずかに2%。この割合は過去2~30年変化がありません。電気を使って走っているのは、2~30年前から電車です。これを知っている人は残念ながら非常に少ないですが、資源エネルギー庁の統計をみるとすぐわかります。
データって今いろんな人がいろんなデータを出しているから、信頼性っていうか、重要性ってわかりにくいからあまり見たくない。そう思う人も多いのじゃないでしょうか。その通りです。そのデータが信頼置けるのか、重要性がどれだけあるのか、きちんと見分ける必要があります。
だからこそエネルギーに対しては信頼置けるデータが存在することを知ってください。あなたの家庭では毎月電気代ガス代を払うでしょう。あなたの家庭で、そして日本の家庭で、エネルギー消費は電力会社とガス会社が把握しています。全国のガソリンスタンドでは、消費したガソリン、軽油、灯油などの量が記録されています。現在加盟しているすべての国で、IEAという組織の要請により、このデータを総計してIEAに報告し、IEAが世界の消費データを公表しています。各家庭、各商店、各ビル、などの消費電力、消費ガス、消費石油製品は、ごまかしようもなく把握されていますから、このようなエネルギーデータは信頼できるでしょう。日本では資源エネルギー庁が、この統計に責任を持って対処し、IEAに報告をしています。そして日本向けにすべての人が自由に見れるように、ネットでエクセルデータを公表しています。そのエクセルデータを使って作成したグラフが上のグラフなのです。
このようにごまかしや記入漏れが非常に起きにくいのがエネルギー消費のデータです。家庭やビル各商店各工場などで消費されるエネルギーを、最終エネルギー消費と呼びます。最終エネルギー消費の性質上、どのエネルギーがどこでどれだけ使われたかは、国別に明確にわかります。そのデータを使って、運輸でのエネルギー消費は家庭より多い、そしてその98%は石油製品であるとわかるのです。重要でかつ信頼置けるデータなのです。
日本では世界に誇る新幹線がひっきりなしに走っていますし、東京や他の都会ではJRや私鉄の市民の足として電車が走っています。それでもこれほどエネルギー消費が少ないのは、驚きでなくて何でしょう。何故エネルギー消費が少ないのか。それは電車が鉄道の上を鉄輪で走るからです。円形の鉄が鉄の上を走ることによって、運動に対する摩擦抵抗を極度に減少させた結果こうなるのです。タイヤで走ってはこうはなりません。つまりEVでこれほどの省エネ効果は得られないのです。
東京一極集中のもと、戦後日本は東京を便利に新しく、それに反して地方を取り残し、多くの地方都市が衰退の危機にあります。東京は今や世界最大の都市圏を形成していますが、それを支えたのが地上地下に網の目のごとく張り巡された電車路線網でした。そしてその路線網をひっきりなしに電車が走り、電車は常に乗客で満たされています。東京の電車路線網は、どう考えたって世界一を誇ります。それでも電車の消費エネルギーは驚くほど少なくて済んでいることは、上に見た通りです。
一方地方の電車は廃線になる例が後を絶ちません。悪しき循環です。ヨーロッパを旅してみると、LRTが町を引き立てていることが良くわかります。
日本を持続可能国に引き上げるために、地方をもっと住みやすくさせる必要があります。そのためにはそれぞれの地方で考え抜かれた路線に、LRTを敷設するしかないのです。繰り返しますが、自動車過剰社会は長続きしないのです。ガソリン価格が政府の手にも負えなくなった時自動車過剰時代は終わるのです。電気自動車にすべて変わるというのも幻想にすぎません。自動車過剰時代が終わったとき、電気や水素の自動車は、鉄道を補完する副次的な乗り物になっているでしょう。一学者の私的な意見だと思わないでください。信頼置けるデータが自動車の非効率性を示しているのです。
また空飛ぶ自動車やリニアモーターカーなどに期待を持つ人も多いでしょう。それをちょっと考えて見ましょう。
まず空飛ぶ自動車ですが、空を飛ぶためにどれだけエネルギーを使うでしょう。それに自動車には事故がつきものです。事故った自動車が空から降ってくるって、何といやな社会だと思いませんか? 空飛ぶ自動車が自動車に取って変わることはないでしょう。
リニアモーターカーに期待を持つ人は多いでしょう。しかし軌道上に電磁石をずらりと並べなくてはなりません。それこそ自動車や人の邪魔でしょう。また鉄道総研の論文では、現在開発中のリニアモーターカーは、空中に浮遊するとは言え、敷き詰めた電磁石が、車両からの反作用によって振動を起こし、その結果走行に対するエネルギー消費が、自動車と鉄道の中間値にあると発表されています。要は鉄道ほど省エネ効果は無いということです。
注)誤解がないように最後の文を詳しく説明しておきます。リニアモーターカーは、まだ実際の経路に走行してはいませんが、その前の段階として、いわゆる実証実験が行われています。実際の走行条件に近づけて、実験路線が敷かれ、その上を実験車両が走行しています。試乗した人も多くおられると思います。そして様々なデータを鉄道総研がとっています。
私がネットで見た鉄道総研の論文で、リニアは鉄道と自動車の中間のエネルギー消費であると結論付けられていました。また実際にリニアを見学した人たちから、リニアは音がうるさいという話を聞きました。音がうるさい理由を物理基礎程度の物理を使って考えると、上の文になります。