石油確保に向けて日本の動き
トランプのイラン攻撃から二ヶ月が経ちました。ホルムズ海峡では多くの船舶が通過できず待機状態になっています。しかし高市政権はどういう訳か日本は安心して良いというメッセージを出したがっているようです。
つい最近でも幾つかの動きが報道されています。アメリカから石油運搬船が一隻日本に到着したそうです。ほぼ同時に二ヶ月分の石油を放出するというニュースが流れました。一隻のタンカーが運ぶ石油の量など、二ヶ月分の石油から見たら、わずか一滴に過ぎませんが、それでも日本の人々は何となく安心の材料にしているのでしょう。また数日経った後今度はイランに通してもらったタンカーが一隻日本に到着したというニュースもありました。
ヴェトナム・オーストラリアは原油を輸出できるのか?
そのようなニュースの後、高市首相がヴェトナムとオーストラリアを訪れるというニュースが流れました。トランプにたいそう上手に取り入ったあとは、外遊のニュースなどほとんど無い高市首相ですが、このタイミングはやはり石油確保なのでしょうね。人々はまたも安心の胸をなで下ろすのでしょうか?
確かにヴェトナムとオーストラリアは、アジア太平洋諸国で希少な資源豊かな国です。アジア・太平洋地域と言うことで距離も近い。しかし今現在問題になっている原油に対してはどうでしょうか? 気になりませんか? ここではIEAのデータを使って見てみましょう。



石油に集中して説明しますので、図を大筋でご理解下さい。
上記3図は、1990年・2010年・2023年における、アジア太平洋諸国全体で見た、全種エネルギー消費についてのSankey図です。アジア・太平洋を構成する国名は、この記事の下に書いてあります。図はIEAのHPから抜き出してコピーしたものです。三つの図のそれぞれで左端が一次エネルギー、右端が最終エネルギー消費を表します。色によってエネルギー種別が表示されます。石油は黒い色であらわされています。また色づけされた線の太さで、エネルギー消費量が表されています。
左端に表示される一次エネルギーは、上部にあるその国で産出されたものと(Domestic Production)、下部にある輸入によるもの(Imports)とにグループ分けされています。石油を表す黒い線をみると、三図のうち左にある1990年では、自国産出と輸入がほぼ同じ量であったのが、2010年・2023年では、だんだんと自国産出の線が細くなっています。実は自国産出が減ったのではなく、石油輸入がどんどん増えていったのです。自国産出量はそれほど変わっているわけではありません。

上の図は小さすぎるので、少し大きな図にしましょう。左の図は上の左端の図と同じ1990年のアジア太平洋諸国でのエネルギー消費を示したSankey図です。
石油を左から右に追って行きます。自国産と輸入からの原油(濃い黒線)は第二段階で合流し、一部は分かれてそのまま最右下のExportへ流れます。この地域の国で確かに原油を輸出していた国があったことを示します。しかしその大きさは最左にある原油輸入量よりかなり少ないことが線の太さでわかります。
原油の大部分はそのまま右へ流れ、第三段階を通過し色が変わって淡い黒になります。これは精製されてガソリンなどの石油製品に変わったことを意味します。ただしエネルギー保存則に従ってエネルギー量は変化しないので、第三弾の左右の線の太さは変わりません。
この大きな流れは、輸入から来る石油製品に第四段階で合流し、第五段階の最終エネルギー消費各所に分かれて流れます。

次に2023年のアジア太平洋諸国のエネルギー事情を見てみましょう。左にSankey図を示します。まず一次エネルギー全体が1990年の9万PJから29万PJへと、3倍以上に跳ね上がっていることに注目しなければいけません。これは主として中国と韓国の影響ですが、ここではそれを詳しく論じるのは止めておきます。
石油だけに注目します。明らかに原油輸入が領域内の産出を大きく上回るようになりました。そして1990年にはあった原油輸出は、ほぼ消えてしまっています。輸出にも黒い線が一部向かっていますが、淡い黒が石油製品の輸出であることを示しています。アジア太平洋諸国からは、石油危機に対応できる大量の原油輸入はこの図から見ると望み薄なのです。
IEA-HPのSankey図ではカーソルを当てると数値が出てくるようになっています。そこで原油輸出量を調べてみると、この地域全体で1990年には4543PJあった原油輸出は、2023年には1640PJに減少しました。原油産出量は1990年には13900PJだったのが、2023年には14800PJに少し増えただけで大きな変化はみえません。
これまでアジア・太平洋諸国全体で見てきました。残念ながら近隣諸国であるアジア・太平洋諸国では、原油輸入はあまり見込みがないのですね。次にヴェトナムとオーストラリアの事情を見ていきましょう。
ヴェトナムでの原油産出は115PJから377PJに増加しましたが、原油輸出は111PJから117PJとほとんど変化なしです。一方原油輸入はゼロだったのが447PJに増えました。ヴェトナムは輸出国から輸入国に変化したのですね。
オーストラリアの原油産出は1215PJから747Pと減少、輸出は245PJから575PJへと増加、輸入は427PJから338PJへと減少しています。しかしこの資源大国は石油であまり商売を考えてないようで、石油製品は1744PJを輸入しており、原油輸入および輸出を上回っているのですね。一方石炭と天然ガスは輸出用に大量に生産しています。国産エネルギーの内61%が石炭、31.5%が天然ガス、原油は4%に過ぎません。天然ガスがこれだけあるなら、石油ももっとあるかもしれません。しかし探してまでもそれをやってくれと言っても、すぐには応じてくれないだろうし、特に石油時代を終焉させなければならない時代に、トランプ以外の国家指導者が、すぐに石油大幅増産に踏み切るかは解らないし、日本がそれを頼むのも長期的には良いのかどうか解らない。
それらを考えると日本の原油必要量は五千PJ強ですから、規模から考えてオーストリアも石油の決め手にはまりえないでしょう。高市さんが何故この両国に今現在石油危機に面して訪問したか、どうも解らない。
まさに怪です。
ひょっとして国民の人気を続けるための方策かもと疑いたくなります。憲法改正のためにやってる感だけを演出しているとすれば、日本人のエネルギーに対する無関心を続けさせるだけかも。
ちなみにアジア太平洋諸国とは、IEAのデータでは次の国の総和で表されています。
オーストラリア バングラディシュ ブルネイ コロンビア 中国 台湾 香港 インド
インドネシア 日本 韓国 北朝鮮 ラオス マレーシア モンゴル ミャンマー
ネパール ニュージーランド パキスタン フィリピン シンガポール
世界規模で見てみましょう。日本の原油消費量約五千PJに対して、アメリカの現在の原油生産量は約三万五千PJ、原油輸入量は約一万五千PJ。原油の輸出量は九千四百PJ、石油製品の輸出量は九千七百PJ。1990年にはアメリカは原油を輸出していなかったことを記憶しておくべきでしょう。シェールオイルでアメリカの原油生産能力が増えました。しかしシェールオイルは初期投資が大きく、中東の石油より高価になります。トランプは当然シェールオイルを増産してディールのカードとしたいでしょう。
一方ロシアの原油生産量は約二万二千PJ、そのうち半分が輸出され、原油輸入はなし。
このまま考えなしに進んでいくと、気がつけば原油の大半をアメリカとロシアが握り、ガンガン自国ファーストを進めて、戦争を仕掛けまくる。恐ろしい未来が待ち受けているかも。
そのような事態を避けるため、西欧近代を基にした現代は、新しく乗り越えられるべき存在と考えるべきと考えています。そうすると未来が開ける思考が可能になってきます。乗り越えるためには、もちろん世界中の平和と民主主義を愛する人々の協力が必要であり、多様な文化の交流が必要でしょう。日本の伝統的な文化は、画一的な西欧近代を乗り越えるために必要な柱の一本になるでしょう。そして日本伝統文化の中心であり続けた京都は、世界の人と交流の場として重要な役割を担い、そしてそのような京都を市民とお客様が協力して造るために、重要な交通機関の基、それが京都LRTであると考えています。