20世紀の発明物で、一番エネルギー消費が激しいのは、自動車ではないかと思います。液体である石油を使うことで、どこにでも自由に移動できる自動車が開発され、瞬く間に道路を占有してしまいました。
自動車(それに飛行機も)は、コンパクトにかつ狭いスペースにたっぷりと、保有させることが出来る液体燃料が一番便利なのです。事実石炭時代にも自動車は試されたでしょう。しかしうまく行きませんでした。時代は下って、太平洋戦争時に、石油を戦闘機などに集中させる必要があった日本では、木炭自動車が試されましたが、普及しなかったことは、僕たちの先輩達(もうほとんど他界されましたが)の多くから直接聞いたものです。これはその時代の主たるエネルギー源が、その時代の先端の部品を選ぶ良い例です。石炭は自動車を選ぶことは出来ませんでした。
それでは電気は自動車を選ぶことは出来るでしょうか?
これも歴史が参考になります。最初の電気自動車はエジソンが造っていたのです。そして現在も自動車各社は電気自動車で競争をしています。
明らかに電気は液体燃料よりも、自動車にとってしっくりくるエネルギーではないのです。だからバイオで液体をつくって、それで自動車を走らせるべきと言う人がいます。時々思い出したように環境活動家がバイオで自動車を走らせると主張したりします。
残念ながら、それは日本では現実的ではないのです。何故なら日本の道路上で消費される石油製品を、バイオ畑で、つまり光合成で、生成しようとすれば、日本全土くまなくバイオ畑にしなくてはなりません。くだんの環境活動家の家も取り壊され、バイオ畑になるのです。
交通でのエネルギー消費の実態を知ろう
持続的な交通システムを考えるなら、エネルギー消費の実態を知らなくてはなりません。すでに親ページでサンキー図を紹介したとき、final consumptionで石油製品の多くがRoadすなわち道路上で消費されるが、一方同じTransport(交通)でも、Railすなわち鉄道上で消費されるエネルギーは、ごく少ないことを見ました。
実際にオンラインでデータを見て、必要な場所の数値を読み取って見ましょう。親ページの最後にオンラインで見る方法を書いておきました。簡単に言うと①検索エンジンでIEAを検索そのHPに入る②iea.orgの後/sankeyを入力する③左でjapanを選び、さらにfinal consumptionを選ぶ、でした。
図のほぼ中心部にTransportとあり、それが分かれてRoad,Domestic aviation(国内空路),Rail, Domestic navigation(国内航路)に分かれます。Roadが圧倒的に太いですね。
Roadと言う字の上にカーソルをあて、クリックしてみましょう。右図の上の図が出てくるはずです。数字を見ると道路上でのエネルギー消費は61.0Mtoeで、その内訳はほとんど石油製品、つまりガソリン、軽油であり、ごくわずかにバイオが入っています。日本ではほとんどバイオは貢献していないのです。
次に同じTransportのRailをクリックしてみましょう。右の図の二番目が出てきます。数値は合計で1.7Mtoe、内訳は電気1.5Mtoe、石油製品0.2Mtoeとなっています。日本でこれだけ新幹線、在来線、各都市通勤電車が走っているのに、自動車と比べてずいぶん少ないですね。これは「エネルギーって何だろう?」にも書いたように、鉄道では摩擦抵抗が道路上より激減することが主原因です。自動車は持続不可能な乗り物、鉄道は持続可能な乗り物なのです。未来の交通の主役は鉄道となり、自動車は電気自動車で、鉄道を補完するものとなるでしょう。
参考の為に右の一番下の図として、家庭でのエネルギー消費を示しておきます。これもオンラインで見ている人は、Othersの中のResidentialを選んでやると出てくるグラフです。Roadの約60Mtoeに対してResidentialは約40Mtoeですから、家庭の1.5倍ほどのエネルギーが道路上で使われています。一人一人が家庭で心がけるのではなく、地域の皆で相談しながら、町中での自動車の必要性を減じる方が、よほど持続社会に向けて大きな貢献をするでしょう。
町で効果的なLRT網を造りだし、道路を人中心のものに変えていく、このような景色が全国で展開されたら、日本は大きく持続社会に近づくでしょう。