今私たちは何をなすべきでしょうか? 何が出来るのでしょうか? 持続的な未来社会を築く為に。
持続的な未来社会は、地方分散型社会です。産業革命以来、都市集中が進みました。化石燃料がそれを後押ししたからです。
しかし持続的な社会は、太陽エネルギーを起源とする再生可能エネルギーを利用した社会です。太陽エネルギーは、地球全体に分散して注ぐ以上、分散型社会が持続社会としてふさわしいのです。分散型社会を実現するには、各地域の中小都市を活性化しなければいけません。中小都市の活性化に、それも未来を見据えた活性化に、最もふさわしいのは、地方都市の車依存を終焉させることです。
失われた30年のあいだ、日本経済は停滞してきました。現在日本は第三位の経済大国とされていますが、近い将来、ドイツに抜かれて第四位に転落すると予言されています。(このページを最初に執筆した際には予言であったものが、現在では事実となっていることは多くの方が既に知っていると思います。)経済大国の指標はGDPですが、GDPは人口に強く依存します。第二位の中国は日本に比べて人口が非常に多いので、中国に抜かれたときはそれほどショックではありませんでした。
しかしドイツは人口八千万人ほど。日本の人口の約2/3です。ちなみに人口減少について、悲観的にあおる記事がSNSで大手を振ってまかり通っていますが、第三位になったドイツより日本の人口はずっと多いのですよ。それも国土面積はほぼ同じなのに。どうして一時日本でも流行ったプラス思考を、この国難に当たって実行する人が皆無になったのでしょう? 少なくともドイツと日本の違いを考察する人がもっと出てきてもおかしくはないのに、何故そのような考察が出来ないのでしょう。日本の社会科学者何をしているんだ。
ドイツと日本のGDPの差は私は日本経済の構造にあると考えています。東京にすべてを集中し、地方を衰退のままに任せてしまったのです。下記にリンクする動画で是非ドイツの地方都市の活気を感じてください。
カールスルーエのLRTとカイザー通りのトランジットモール-I – YouTube
このページは、YouTubeの下記のチャンネルの動画を見ることで、よりよく理解して頂けると思います。また下記チャンネルを登録して頂けるとありがたいです。
南駄老のLRT紹介チャンネル – YouTube
なお、地方分散型の国であるドイツと、異常なまでの首都集中型である日本との、首都圏の人口分布を比較することによって、ブログで論じていますのでご覧ください。
ドイツと日本の決定的な違い – 南駄老 (ene-tei.blog)
21世紀の社会は、再生可能エネルギーが造ります
「エネルギーって何だろう?」「エネルギーと社会」の二つのページを既に読まれたかたは、21世紀社会は再生可能エネルギーが造る社会であるということを、ご理解いただき始めたと思います。産業革命以来エネルギー源は、最初は石炭、次に石油と大量の電気と、それ以前とは大きく変わりました。そしてエネルギー源は、社会を大きく変えてきました。エネルギー源が変われば、社会はそれに合せて大きく変わるのです。これを理解しないで「脱炭素」を軽々しく言えば、それは未来を誤ることになります。
脱炭素は脱化石燃料です。そしてそれは「再生可能エネルギー社会」を築くことに他なりません。そしてその社会は真の意味で持続社会です。20世紀までの進歩を、さらに持続社会に高めるためには、人々がエネルギーを基本的に良く理解し、再生可能エネルギー社会を地域の人が中心となって、民主的にそして着実に築きあげる必要があるのです。
LRTは持続都市の交通の骨組み
21世紀の初め、我々は持続社会の入り口に立っています。20世紀型の都市にしがみついて、持続不可能都市への傾斜を固め、22世紀には消滅の危機を迎えるのか、それとも今世紀後半には、これから少なくも1000年持続繁栄する都市への変貌を遂げるのか? どうも今の日本の現状を見ていると、皆持続不可能社会経向かう赤信号を渡りたがっているようです。赤信号みんなで渡れば怖くないと。
思い切って、皆で青信号への切り替えを行おうではないですか。東京一極集中を止め、地方分散型に大きく日本の舵を切るのです。そして20世紀型の自動車過剰社会を改め、持続可能都市へと、全国の都市を改造しましょう。
交通をどうするのかは、都市設計の要です。20世紀後半、急速な自動車社会への変貌が起こりました。そのため様々な障害に日本の多くの都市は苦しんでいます。
持続都市では、人が道路の主役となります。自分の足で歩く、自転車で移動する、京都はそのちょうど良い大きさを持ちます。東京で私は一時期自転車通勤をしていました。片道40~50分で、通勤時間とすれば東京では普通の時間ですが、何より自動車が猛烈な勢いで後ろから追い抜いて行くのは、とても怖いものでした。東京の道路はあれだけ公共交通機関網が整備されながら、それでも飽き足らず自動車に占領されてしまっています。
道路を自動車から解放し、再び人を道路の主人公に
日本でも歩行者空間は少しずつ増えてきました。しかし都市の中心部に、系統的に歩行者空間を作り出す事にかけては、ヨーロッパの都市に大きく遅れを取っていることは、認めなければいけません。その一例を幾つかの写真でお見せしましょう。
図-1~図-3は、ドイツカールスルーエの中心街カイザー通りの写真です。20年ほど前に私が撮ってきたものです。図-1では、すれ違う電車も構わず、人が線路を横切っています。ドイツでは電車も右側通行です。全体が映った電車が通り過ぎた後、この人は渡りはじめ、左にちょっと見えている電車が来る前に渡り終わろうとしています。道路からは自動車が排除されており、電車だけがゆっくりと人々の足として通行しています。まさに人が主役として道路を取り返しているのです。この人の向こう側では、オープンカフェが店を開いており、人々がお茶か食事を道ばたで楽しんでいる様が映っています。
このような道路空間はトランジットモールと呼ばれています。トランジットモールでは、電車は恐らく時速15~20kmで走っていますし、自動車と違って軌道を外れることがありませんから、人は電車の動きを自分で判断し道を渡ります。ドイツの人は信号が赤だと、例え車が見えなくても絶対に渡りません。規則が必要な時には規則を作り、絶対にその規則に従います。トランジットモールでは、皆が規則は必要ないと思っているので、信号という規則がないのですね。
トランジットモールを走る電車はLRT
図-1で歩行者が主役となった都市の中心街のご紹介をしました。そこには電車が映っていますが、この電車は路面電車で、LRT(Light Rail Transit)と呼ばれています。新世代路面電車とも訳されたりします。
すでに我々は電車がとてもエネルギー消費が少ない乗り物であると学びました。持続社会建設の為には、うってつけの乗り物なのです。
図-2は図-1と同じカイザー通りで、電停の様子を示します。私が乗った車両が動き出し、電停から離れた後に別の電車がまさに電停に着こうとしています。乗った車両の後ろの窓から撮影しています。
それにしても電停のイメージが、日本の路面電車のものと全く違うのに、気が付いたでしょう。図-2を見ても、すべてが平らだと見えますよね。でも注意深く見ると、白く長いT字形の電車側に、白線が見え、その白線に沿って、段差が造られているのがわかりませんか?この段差が停留所の、電車との境界を表します。図-3はちょうど電車から降りようとしている人の足元です。
どうです。降りる人の足は、全く段差を感じないことがわかるでしょう。こういう芸当はバスでは決して出来ないものです。電車は横向きと上下には1cmほどの狂いもなく進みます。従って停留所との高低差もなく、わずかな隙間を残しただけで、駅の平面に接することが出来るのです。
つまりトランジットモールが整備されたら、町の中心部にLRTに乗って、郊外や鉄道駅からやってきて、ついたとたんに階段を一段も上り下りすることなく、その都市の中心的な商店街を楽しむことが出来るのです。ベビーカーを押していても、車いすに乗っていてもです。現在の日本の町とは大違いでしょう。
他の町の例ーグラーツ
ヨーロッパの多くの町に、このようなトランジットモールがあります。ヨーロッパでは、それとなく当たり前の景色になっているので、旅行者は日本とは全く違う町の一部と思い、指摘されたら「ああ、そうだったな」と思う程度でしょう。
他の町の例も多少は映像で持っているのですが、それよりも誰でも出来る体験を、グーグルマップで楽しんでみましょう。ネットでトランジットモールを簡単に疑似体験できるとは、私も最近まで思いもよらぬことでした。
ネットでこのHPを訪れていただいたかたには、簡単な仕組みです。グーグルマップのストリート・ビューを使うのです。日本語で大丈夫です。
まずグーグルマップに入って下さい。左上に検索窓があるでしょう。そこに「グラーツ ヘレンガッセ」と入れて下さい。カタカナで。それだけで一気にヘレンガッセに飛んじゃいます。
グラーツは日本ではあまり知られていませんが、オーストリア第二の都市で、歴史も古く、私が好きな町の一つです。ヘレンガッセはその中心街で、やはりトランジットモールになっています。
グーグルマップでヘレンガッセに飛びましたか? それならそこでストリートビューに入ってみましょう。LRTとトランジットモールが直ちに見えるでしょう。ヴァーチャルリアリティで。そしてヘレンガッセを散策できます。通常のストリートビューそのままに。
ストリートビューは、グーグルマップが、戦略的に世界中の地域を訪れ、連続的に写真を撮ることで、その地域の景色を、ストリートビューを通じて擬似的に体感できる仕組みになっています。今これを見ている貴方の家の写真も恐らく見えるでしょう。世界中の町がこうしてグーグルに見られているのです。
でも世界中の地域を見るためには、写真を撮る人は車で移動しています。私も仕事関係もあって、各地に滞在したりしたのを、ストリートビューで思い出すことも多いのですが、ストリートビューはすべて「車目線」であり、心の琴線にふれるようなことは、ほとんどありません。しかしヘレンガッセだけは違います。
明らかにグーグルのこのプロジェクトで、人が歩いたのです。だってトランジットモールでは、自動車排除なのです。グーグルは明らかに、この歴史ある町の中心街を、歩いてでもヴァーチャルリアリティとして、取り入れたかった、そうとも考えられます。一方、グラーツも町の宣伝として、グーグルのストリートビューの徒歩版を主導したかった。そのあたりは想像を超えませんが、グラーツは私の好きな町の一つとして、ストリートビューを楽しんでいます。
LRTは都市交通の柱
LRTは信号をリードする
右の図は、カールスルーエLRTの、前の窓から進行方向を映した写真です。右に自動車が並び停止しています。自動車はLRTの前では線路に入ることは出来ません。
前方を自動車が一台線路を右から左へと横切っています。明らかにそこの信号は、LRT側から見ると赤信号であり、横に並んだ自動車達はその信号に従って停止しているのです。この写真は元々は動画として撮影してきたものを切り取った写真ですが、動画では前方の自動車の横断が終わったとたん、右に並んだ自動車達が動き出します。そしてLRTは停止することなく、前方の交差点を通過します。
今思い出してもヨーロッパでLRTに乗っているとき、信号で停止した記憶がありません。動画を詳しく見ても、LRTの接近の度に、前方の信号が赤から青に変わります。
LRTは信号を主導する。そのように設計されているのです。自動車第一ではなく、公共でエコなLRT優先。これもバスでは出来ません。トランジットモールではない道路では、自動車とLRTは共存しますが、LRTが優先されるのです。
パークアンドライドはシンプルに
右の図は、別の町ですが、パークアンドライドの写真です。撮影者の私はドアの内側にいて、まさに今ドアが閉じようとしています。
すぐにわかるように、駐車場は道路面にあり、駐車してLRTに乗車するまで、段差が全くありません。また手前の空いた場所は、身障者優先の場所で、健康人の自動車は、そこを空けて止まっているわけです。
郊外の電停にこのような場所を確保しておくと、LRT利用者は、自宅からこのような場所がある電停まで行き、そこからは、全くバリアフリーに、階段を一歩たりとも上下する事なく、トランジットモールの商店街へと、快適に移動ができる訳です。
快適なLRT網が都市に張り巡らせてあれば、何も自動車で苦労して町中の駐車場を探す必要もなく、これから間違いなく進行するエネルギー価格の上昇にも絶えることができ、持続都市を子孫にも安心して伝えることが出来るわけです。
まとめ
日本を持続型社会の根幹である地方分散型社会にするために、地方都市を活性化しなければなりません。そのための大きな第一歩は、地方都市を自動車依存から脱却させることです。都市のメインストリートを、人主体の道に戻し、そこに四方の郊外から電車(LRT)で簡単にいくことができる構造を作り出すのです。
そのことによって、その都市では生活が楽しくなり、多くの人が移住しようと考えるようになる。それが地方分散型社会への移行を大きく促します。
これは各地方都市に住む人達の問題です。では大都市圏ー東京都市圏に住んでいる人、特に東京に住んでいる人は何が出来るのでしょうか。
その一つがふるさと納税です。次のページでふるさと納税を考えて見ましょう。
一方地方都市の人は、自動車社会を見直すために、自転車を利用する方法があります。滋賀県の試みは参考になるだろうと考えます。