エネルギーって何だろう? あえて厳しく言います。この問いに答えられる人は、日本ではほとんどいないでしょう。いや多くの人が答えられるとご自分では考えているが、その人の説明が的確かどうかを考えると、多くの人の説明が間違っていると言わざるを得ない現在の状況です。
何故エネルギーが正しく認識されないか?
一般に流布するエネルギーについての話は誤解だらけです。何故人々にエネルギーが正しく認識されないのか? 私はずいぶん長い間考えました。
エネルギーを素直に理解するのは、決して難しくないのです。エネルギー保存則という法則がありますが、それを正しく理解すれば良いのです。それなのに何故正しい理解が浸透しないのか。ある時期ある考えに気がついて、その考えは徐々に確信になりました。その考えとは単純です。現代では皆が化石燃料で活動している。現代社会は化石燃料が造った社会である。そして化石燃料が無くては、この現代社会は成立しない。これを人々は直視したくないのだ。
化石燃料は有限な資源です。使い続ければ、段々希少価値がついてきます。言い換えれば、化石燃料は段々高くなる宿命なのですね。今現時点でもプーチンのウクライナ侵攻で、化石燃料は値上がりしています。
化石燃料の価格は今後も高下するでしょうが、長い目で見ると高くなり続けます。政府が支えますなどと、やってる感だけの戯言はそのうち言えない状況になるのは明らかです。
そのような未来は誰も見たくないでしょう。20世紀後半、戦後復興を遂げた日本人は、平和で多くの人が、例えささやかでも幸福を感じる時代がずっと続くと考えていました。しかし間違いなく、化石燃料は高騰するし、多くの庶民には手が届かなくなる。簡単な理屈です。希少品になればなるほど、価格は高くなるのです。市場原理の基本法則みたいなものでしょう。
人は言うかも知れません。「だから原発が必要なのだ」と。しかしそういった人は自らエネルギーに対する無知をさらけ出しています。世界のエネルギー消費の内、原発が供給する電気はわずか2%に過ぎないのです。原発は現在(福島原発事故以前も)、世界のエネルギー需要に応えていないのです。
エネルギー理解の二本の柱
それでは正しいエネルギーの理解はどうすれば得られるのでしょうか?
そのようなエネルギー理解には二本の柱が必要です。
その一つは「エネルギー保存則とエントロピー増大則」。物理学の法則の中で、最も大切な法則です。物理学と聞いてどん引きする人も多いでしょうが、実はこれは物理学の法則の中でも最も簡潔で、よく考えるとわかりやすい法則なのです。小学校高学年でもわかります。これをしっかりと認識しなければ、エネルギーについての誤った議論に陥ります。
今一つは、エネルギーに対する統計です。どれだけの量のエネルギーを我々は消費しているか、これは日本だけの統計を見るなら資源エネルギー庁が、世界の統計を知りたければIEA(International Energy Agency)が毎年発表する統計を見るとわかります。これもポイントを押さえて調べると、小学校高学年でもわかるでしょう。
エネルギーって何だろう?
左の書籍をお読み下さい
左の書籍に「エネルギーって何だろう?」の内容を、執筆者・編集者達が、楽しく解りやすいイラストも含めて、丁寧にまとめて頂きました。小学生でも高学年になれば理解できるようまとめてあります。私は監修者の立場ですが、書籍作成の最初の段階から、意見を言わせて貰ったので、私としても満足できる書籍となっています。
書籍は執筆者ー監修者ー編集者と、多くの人の共同作業です。私一人で書くよりも、ずっとわかりやすく、正確に、また読者を混乱させることがないように、多くの人がチェックしています。したがって「エネルギーって何だろう」という大事な問いに、改めてここで書くのではなく、誰でも読める図書館本として造られた左の本を、多くの人が借りて、ゆっくりと親子で共有したりしながら読んでいただければと考えています。
お近くの公共図書館に探す本があるか、また本は貸し出されてないかを見るにはカーリルというサイトがあり、そこから検索できます。下のリンクからカーリルに入ることができます。右上の検索の窓に著者名(小池康郎)または書名を打ち込み、探すのボタンを押せば、図書が出てきますから、それを選んでカーリル指定の方法で望みの地域の図書館を探します。
カーリル | 日本最大の図書館蔵書検索サイト | カーリル (calil.jp)
「エネルギーって何だろう?」に書いておいた結論の要点を以下に書き出しておきましょう。
要点
最初の要点はエネルギーの三つの性質です。
- エネルギーは変換される
- 変換の前後でエネルギーの総量は変わらない
- 最後はすべて熱エネルギーになる
エネルギーは変換されて始めて意味を持ちます。例えば電気はそのままでは役に立ちません。例えば電灯では電気エネルギーが光エネルギーに変わります。しかしそこで大切なのは、エネルギーの量です。総量は変換前と変換後で変わらない。これがエネルギー保存則と呼ばれています。
変換前と変換後を具体的な例で考えてみましょう。電灯はしばらく点けておくと熱くなります。つまり電気エネルギーは光エネルギーだけではなく、熱エネルギーにも変換されました。二番目の性質を改めてお読みください。変換前の電気エネルギーの量と、変換後のエネルギーの総量‐光エネルギー及び熱エネルギーを足した量(もし音などしていたら音エネルギーも足さなけれないけません)‐は等しいことになります。そしてすべてのエネルギーは変換を繰り返し、三番目の性質から最後には熱エネルギーになるのです。
一般に得たいエネルギーを変換から得るために、変換前のエネルギーを使いますが、変換前のエネルギーは得たいエネルギーの量より大きくなります。これに反する議論が多くなされています。この理屈を理解するためにも、じっくり「エネルギーって何だろう?」をお読み下さい。
要点2
要点2は地球に降り注ぐ太陽エネルギーと全人類が消費する化石燃料の量を比較するものです。
- 地球に降り注ぐ太陽エネルギー 174兆kW
- 全人類が消費する化石燃料 155億kW (2019年実績)
W(ワット)とは、一秒間に変換されるエネルギー量(単位J)のことです。上の二つの値も、本に導いてあります。執筆者と私が相談しながら小学生にもわかるよう計算法を考えました。この二つの値を見ればわかるように、人類は莫大な量の化石燃料を消費しますが、太陽は常に一万倍ものエネルギーを、地球に降り注いでくれるのです。どうです。詳しく知りたいでしょう。是非本を読んで下さい。
太陽エネルギーの莫大さは、太陽エネルギーの恵みで持続社会を築くことに、多大な希望を与えてくれます。しかし太陽エネルギーは地球全体に降り注ぎます。決して狭い場所に集中しているわけではありません。そのことがエネルギーと社会の構造を考える必要性を生じさせるのです。それは次のページ「エネルギーと社会」で考えます。
要点3
要点3はエネルギー消費に関することです。「エネルギーは変換される」ことで多様性を持ちます。例えば電気エネルギーは、人類が使えるようにとは自然界に存在しません。あくまで人工的に作り出す必要があります。つまり変換前のエネルギーが必要となります。
変換しなくても存在するエネルギーを一次エネルギーと言います。例えば化石燃料(石炭、原油、天然ガス)は一次エネルギーです。また核エネルギー(ウラン235)も一次エネルギーに分類されます。以上述べた一次エネルギーは、すべて資源ですが、使ってしまうと無くなる資源です。化石燃料と核エネルギーは、自然界に存在する凝縮されたエネルギー源なのです。
資源ではない一次エネルギーは、再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーのほとんどが、太陽を起源とするエネルギーです。
これに対して、電気などのように、他のエネルギーから変換して得られるエネルギーを二次エネルギーと言います。例えば水素なども二次エネルギーです。水の電気分解で得られるとすれば、電気エネルギーが変換前のエネルギーです。エネルギーの性質から、変換後得られる(目的の)エネルギーは、決して変換前のエネルギーより大きくはなりません。この性質を無視したようなエネルギーの話はすべて「科学の顔をしたおとぎ話」すなわち、単なる夢物語・吹けば飛んで消えるバブルです。このような話が何と多いことか。
元々からのエメルギー源について考えると、一次エネルギーという考えになります。
一方どのようなエネルギーも、必要とされる場所で消費されます。必要とされる場所での消費を最終エネルギー消費と言います。
エネルギー消費については、以上のことを理解して、その大きさを知らなければなりません。それがエネルギー消費の実態を正しく知ることになります。
また上記図書以前に、エネルギーについて一般の人、及び文系学性にエネルギーについての基本的考えをまとめた左の本が、私の出発点です。
エネルギー保存則、エントロピー増大則は、熱力学第一法則、第二法則として、技術者なら必須科目である熱力学の基本をなすものとして、理系の物理学化学およびその応用を学ぶ大学では、必須科目の一つとして確立された学問体系です。
しかしそれを用いてエネルギー全般に考えを巡らす作業は、ほとんど行われておらず、学問的にも盲点となっており、それが社会に間違ったエネルギーについての考え方を広める結果になっています。エネルギー保存則とエントロピー増大則を、社会的なエネルギー消費のデータと組み合わすことなくエネルギーを語ることは危険だとの認識から、私自身簡単ではあるが様々な計算を行って執筆したのがこの書物です。文系の人にも、基本的には解るように努力しました。
執筆中に東日本大震災と引き続いた福島原発事故があり、東京地区では計画停電が実施され、大変な思いをしました。そのころは日本エネルギー学会にも入っていたので、計画停電の「無計画」性を記事にして学会誌のコラムに投稿したら、時期柄ぴったりの投稿だと翌月のコラムに掲載されもしました。そのような私の出発点です。よろしければ合わせお読み下さい。
夏目漱石と俳句を通じて師弟関係でもあり友人でもあった物理学者の寺田寅彦の名言に「天災は忘れたころにやってくる」というのがあります。五七五のリズムで覚えやすい句ですね。今この文章を書いていて、「広きにわたるエネ危機は、忘れた頃にやってくる」という言葉が浮かびました。ちょっとリズムがなってないナ。でも再生可能エネルギー社会に移行しなければ、エネルギー危機は繰り返し我々を襲うでしょう。
エネルギー消費の実態を、詳しく知れたい方は、下のボタンをクリックして下さい。国際的なエネルギー機関IEAが、エネルギー消費について多くの人にわかって貰うために導入したサンキー図を使って、実際に見てみましょう。