データにみる東京一極集中の弊害Ⅱ

東京都市圏は世界一巨大な都市圏である

 日本人の多くは、世界中に巨大な都市圏があると思っているでしょう。東京はそのうちの一つだと何となく思っている人が多いのではないでしょうか。
 実は東京都市圏は、世界一巨大な都市圏なのです。そして巨大都市圏は主としてアジアに見られ、欧米諸国にはあまり見られないことも、日本人は知っておく必要があると思います。
 東京が現在のように大きな都市圏になり始めたのは、少し考えれば解りますが、高度経済成長期です。日本経済が急速に上向いたときでした。そしてそれに遅れて、東京を見習って韓国ではソウルが、中国では北京と上海が巨大都市圏に変わっていきました。あきらかに後進の国では、都市集中が経済成長を生みます。しかしそれが長期にわたって正しいとは、歴史的にまだどの国も証明していません。日本人は高度成長期の経験から、大都市集中が経済成長に大きく利すると考えがちです。しかしそれは迷信に過ぎないのだと思います。

過去二十年の東京都市圏の人口の推移

 Wikipediaによると2020年の東京都市圏の人口は三千八百三万人に上るという。但し大都市圏の定義は総務省のものに依っている。
 東京都市圏の人口は同じ記事で読めるが、2000年には3449万、2005年には3568万、2010年には3692万、2015年には3727万と、毎回増加しているのである。大都市圏に人口を集中させても経済が良くなるわけではないという皮肉な事実を、他ならぬ東京が示している。
 もちろん増加の度合いは高度成長期には及ばない。経済の成長を生むには、もっと増加の度合いを上げていく必要があるのだろうか? しかしそれを行えば、日本では首都圏以外が急速に衰退し、消滅の危機に陥る地方が沢山出てくる。地方が衰退し消滅すれば、日本も衰退し消滅するだろう。

世界の大都市圏

 Wikipediaには、世界の大都市圏の順位も上げられている。一位は東京都市圏であり、人口は3800万人である。以下に二位以下の都市圏と、人口を上げておこう。
 二位ジャカルタ3400万人、三位デリー2800万人、四位マニラ2500万人、五位ソウル2400万人、六位ムンバイ2400万人、七位上海2200万人、八位ニューヨーク2100万人、九位サンパウロ2100万人、十位メキシコシティ2000万人、十一位広州200万人、十二位北京1900万人、十三位ダッカ1900万人、十四位大阪1700万人、十五位カイロ1700万人、十六位モスクワ1700万人、十七位バンコック1600万人、十八位ロスアンゼルス1500万人・・と続き、ヨーロッパで最大の都市圏パリは33位1100万人、ロンドンがほぼ同じ人口で35位と続いている。ヨーロッパでは大都市一極集中は見られない。

アメリカ合衆国は、国をスタートさせるとき、一極集中を排除した

 アメリカ合衆国はUnited States of Americaである。つまりstateの連合体である。そして首都ワシントンは、どのstateにも属さない。
 すべてのStateは対等である。すべてのstateは上院議員として二人の議員をワシントンに送り出す。例えて言えば、日本で参議院議員が各都道府県二人ずつ選出されるようなものである。
 建国直後、アメリカは各Stateの対等性を守るため、苦心している。建国した十八世紀には、アメリカの国会は毎年異なった町で開かれている。そしてさすがに不便と思ったのか、首都ワシントンがすべてのstateから独立した土地に置かれた。
 その土地は初代大統領ジョージ・ワシントンの邸宅と農地があったマウントバーノン(ヴァージニア州)の近く、ヴァージニア州とメリーランド州の境界に置かれた。そしてワシントンという町が特別区の中に創られ、その町が合衆国の首都ワシントンとなった。特別区(ディストリクト・オブ・コロンビア略してD.C.)の土地は、ヴァージニア州とメリーランド州が提供し、正方形を立てた形に特別区は作られた。しかし大部分がメリーランド州の土地であり、ヴァージニア州が土地を返してくれと言ってきたのを受けて返却されたので、その部分が欠けた正方形の形を、現在でも確認することは容易である。
 このように首都ワシントンは各ステートを越えた特別な町として設計された。人口わずか70万人の町であるが、アメリカの精神を継いで、今もアメリカを統合する象徴となっている。大都市東京から発せられるアメリカ関連のニュースは、すべてワシントン記念塔と、その後ろに見える国会議事堂を背景にして放送されることからも、多くの日本人に解りやすいものであろう。人口3800万の世界最大の都市が、人口70万のワシントンほど、世界に注目されているだろうか?
 アメリカ合衆国は成り立ちからして、大都市一極集中ではない構造を持っている。